OpenWRT(LEDE)で HUAWEIのモバイルルーターを使用する
はじめに
家には光ファイバーによる固定回線があるんですが、 公開サーバーを建てるにあたってその固定回線に迷惑がかからないように、 ゲートウェイからセグメントを変えてネット環境を構築したいなと思いました。
そこで目をつけたのが、モバイル回線です。今回はモバイルルーターである、 HUAWEIの「504HW」を使用できるようにしていきます。
LinuxからのHUAWEI製モバイルルーターの利用
基本的にソフトバンク系のPocket WiFiなどで使用されてきた HUAWEI製のLTEモバイルルーターは対応OSがWindows, Macとされていて、 Linux用のドライバは明に公開されていません。
しかし、どうもグローバル版のLinux用ドライバを使用することができるようで、 ググってみると結構情報が出てきます。
500番台のモバイルルーターはどうも「GL04P」などと同じように、 「HUAWEI Data Cards Linux Driver」を使用することでLinux側からも利用可能みたいです。
調べてみるとWiMAXのモバイルルーターはつなぐとRNDISでつながるらしく、 (つまりスマホでテザリングしているのと同じ繋がり方)挿すだけで使えるようになるらしいです。羨ましい。
OpenWRTでスマホのテザリングを使用するのはRNDISのドライバをopkg入れるだけみたいですね。 HUAWEI P9でやってみましたが、ちゃんと使えました。
HUAWEI Data Cards Linux Driverのビルド
ここが鬼門です。今回使用する「WZR-HP-AG300H」という機材はCPUのアーキテクチャがMIPSで、 (気合で突破する方法を除き、)クロスコンパイルする必要があります。 どうも過去の自分の記事を読むとこれを実施しているようですが
手順を残しておらず、呆れ果てました。今回はちゃんと書きます。
使えるKernelのバージョンに制限がある
今回色々と試してみた結果、使えるLinux Kernelのバージョンが4.4あたりまでということです。 つまり、LEDE 17.01.6が限度のようでした。
OpenWRT 18, 19 では Kernel 4.9 や 4.14 を使用しているのでそもそもビルドすることができませんでした。
具体的には、net_deviceの仕様が変わっており、net_device has no member named trans_start
エラーを突破できません。
ググって軽く見つかるワークアラウンドを試してみるとビルドは通るものの、kernel panicでOSごと落ちてしまいました。 カーネルの非互換恐ろしや・・・
LEDE 17.01.6用にビルドする
というわけで、Kernel 4.4を採用しているLEDE 17.01.6用にビルドしていきます。 前回の記事でも確かLEDE 17.01.6を使用していた気がします。
SDKの準備
OpenWRT(LEDE)用のクロスコンパイル環境を整えるのは簡単です。 OpenWRTがすでにビルド済みの環境を提供してくれていて、対応するバージョンのSDKをダウンロードして展開するだけです。
OpenWrt Project: Using the SDK
今回は上記サイトより、
lede-sdk-17.01.6-ar71xx-generic_gcc-5.4.0_musl-1.1.16.Linux-x86_64.tar.xz
をダウンロードしました。
使用する機材が WZR-HP-AG300H
なので ar71xx
のsdkをダウンロードしましたが、
ここは機材によって変える必要があります。適宜読み替えてください。
展開する
私はWindowsユーザーなのでWSL2上に環境を構築しました。
tar xvf lede-sdk-17.01.6-ar71xx-generic_gcc-5.4.0_musl-1.1.16.Linux-x86_64.tar.xz
として、適当なフォルダに展開しました。この先展開先を /path/to/sdk/
と表します。適宜読み替えてください。
HUAWEIドライバのダウンロード
適当なサイトから「HUAWEI Data Cards Linux Driver」をダウンロードしてください。 もう公式サイトからは提供されていないため、2次配布されているサイトからダウンロードする他ありません。
tar zxf Linux\ Driver\ 4.19.19.00.tar.xz
として、ダウンロードしたドライバを展開します。
すると中に driver/ndis_driver/ndis_src
というフォルダがあるので、
cp -r Linux\ Driver\ 4.19.19.00.tar/driver/ndis_driver/ndis_src ~/
として適当な作業フォルダにコピーします。 今後の作業はこのフォルダにて行います。
cd ~/ndis_src
ソースコードの修正
このままだとクロスコンパイルできないので、クロスコンパイル用に修正していきます。
まずは src/Makefile
KVER := $(shell uname -r) # KDIR := /lib/modules/$(KVER)/build # KDIR := /path/to/sdk/lede-sdk-17.01.6-ar71xx-generic_gcc-5.4.0_musl-1.1.16.Linux-x86_64/build_dir/target-mips_24kc_musl-1.1.16/linux-ar71xx_generic/linux-4.4.153 KMISC := /lib/modules/$(KVER)/kernel/drivers/usb/net KEXT := $(shell echo $(KVER) | sed -ne 's/^2\.[567]\..*/k/p')o
Makefile冒頭のmake用の変数を修正していきます。どうせ一度しかビルドしないので直書きしてしまいましたw
modules: #$(PWD)/src/add_header.sh "modules" "$(KDIR)/include/linux/usb" # $(MAKE) -C $(KDIR) SUBDIRS=$(PWD)/src modules $(MAKE) -C $(KDIR) SUBDIRS=$(PWD)/src ARCH=mips CROSS_COMPILE=mips-openwrt-linux- modules strip --strip-debug hw_cdc_driver.$(KEXT)
Makefileのmodules ターゲットを修正しました。
具体的には make を実行する際に ARCH=mips CROSS_COMPILE=mips-openwrt-linux-
オプションを指定します。
次にソースコードです。 src/hw_cdc_driver.c
を修正します。
135行目
// #include <linux/unaligned/access_ok.h>
2718行目
// dbg ("can't kmalloc dev");
それぞれコメントアウトします。
ビルドの実行
ビルドを実行する前に、クロスコンパイル用のgccにPATHを通します。
export PATH=/path/to/sdk/lede-sdk-17.01.6-ar71xx-generic_gcc-5.4.0_musl-1.1.16.Linux-x86_64/staging_dir/toolchain-mips_24kc_gcc-5.4.0_musl-1.1.16/bin:$PATH export STAGING_DIR=/path/to/sdk/lede-sdk-17.01.6-ar71xx-generic_gcc-5.4.0_musl-1.1.16.Linux-x86_64/staging_dir/
これでビルドできるはずです。 makeしてみましょう
make modules
LEDEへのカーネルモジュールコピー
そして出来上がったカーネルモジュールをコピーします。
scp src/hw_cdc_driver.ko root@XXX.XXX.XXX.XXX:/root/
で、コピーされたファイルを /lib/modules/カーネルバージョン/
フォルダに配置します。(私の場合は /lib/modules/4.4.153/
)
配置が完了したら、
modprobe hw_cdc_driver
でモジュールがロードできたら完了です。
もしかすると mii
が足りないと言われるので、 opkg install kmod-mii
で miiをインストールしてください。
あとは、モバイルルーターが接続されたときにCDROMとしてマウントされてしまうのを防ぐために、
usb_modeswitch
を導入します。
opkg install usb-modeswitch
で導入できます。これでモバイルルーターを接続すると eth2
として認識されるはずです。
完成!モバイルネットワーク環境
こんな感じになりました。 504HWがソフトバンクの4G回線を拾い、LEDEにIPが振られローカルネットワークから出られるようになりました。
2重ルーター(NAT)になるのが気持ち悪いですが、まぁ仕方ない。 (事業者から振られているのがプライベートIPなので更に段数は増えるか?)
終わりに
以前はこの方法でいけたので今回もなぞってやってみました。 ちょっと不安なのがLinuxのカーネルのバージョンの都合上、 サポート切れのLEDEを使用しなければならないことです。
OpenWRTの19系を使用したかったのですが、Linux力が足りず、カーネルモジュールをうまくビルドできませんでした。 (モジュール自体はビルドできたが、使用しようとするとカーネルパニックで落ちる)
まぁあくまで一時的な利用に控えようと思います。
それはそれとして、2年前構築したときはグローバルIPが降ってきてた気がするんですが、 最近ではプライベートIPしか降ってこないんだろうか・・・? 困る・・・
楽天UN-LIMIT用に HUAWEI MatePad 10.4 を購入しました。
以前、キャンペーンを使用して楽天UN-LIMITを契約しました。
UN-LIMIT ということで、無制限で使えることを考えるとまっさきに思いつく用途が動画の再生かなーと思います。
というわけで、寝室で使えるゴロ寝タブレットということで、楽天回線でも使えるタブレットを探してみました。
HUAWEI MatePad 10.4 SIMフリー 「BAH3-L09」
というわけで購入しました、MatePad「BAH3-L09」です。
スペックなどの一覧は他のサイトに譲るとして、買ってみた感想を書きます。(個人の感想ですよ!)
スピーカーが両サイドについている!
HUAWEIのタブレットを購入するのは初めてなんですが、 もともとMediaPadなどマルチメディア再生機として良いタブレットを出してきたメーカーですし、 今回のタブレットもスピーカを側面に2つずつ(計4つ)搭載するなど、「わかっている」ものづくりです。
一方、ALLDOCUBE 「i7 Stylus」・・・
どうしてこうなった!!!
左サイドにはHDMIなどのコネクタが付いているから仕方ないとはいえ、右サイドにステレオスピーカーっておま、10インチタブレットを縦持ちして使えと?!
ソニーの「Xperia Z3 Tablet Compact」なども両サイドにスピーカーがついていてなかなかイケてますよね。しかも前面を向いているという。 ただ、後継機が出ていないのが難点ですね。
ソニー Xperia Z3 Tablet Compact SGP612 ブラック
- 発売日: 2014/11/07
- メディア: Personal Computers
マルチメディア再生機としてのハードはオッケー!
ハードの面では、「Androidタブレット」という、ASUSやソニーが挑戦しつつも撤退してきた中で生き残ってきているため、 一定の信頼を置けると思っています(個人の感想です)
ソフトがNG!!
ただ、ソフトの面ではアメリカからの締め出しを食らってGoogleの「Playストア」を使用することができないのが難点です。 HUAWEIも対抗としてAppGalleryなどという独自のアプリストアを展開していますが、イマイチの出来栄えです。
楽天回線との相性
対応バンドは
FDD-LTE:Band 1 / 2 / **3** / 5 / 7 / 8 / **18** / 19 / 20 / 26 / 28 TDD-LTE:Band 38 / 40 / 41 W-CDMA:Band 1 / 2 / 5 / 6 / 8 / 19 GSM:850 / 900 / 1800 / 1900 MHz (公式サイト[https://consumer.huawei.com/jp/tablets/matepad/specs/] より、太字は著者が付与)
とあるように、楽天UN-LIMITで使用できる 3(楽天回線)、18(パートナー回線)に両方対応しています。
よって、楽天UN-LIMITには完全対応しています。 実際にSIMカードを挿してみるとすんなり繋がり、楽天モバイルのAPN設定も手動でする必要はありませんでした。
HUAWEI P9がバンド3に対応しつつも楽天回線に接続できなかったのは、 バンド18には対応していなかったことが問題と言えそうですね。(接続報告はネット上でいくつか見られるのに・・・)
「バンド3, 18両対応」というのはMatePadの強みと言えそうです。他社(Lenovoなど)のAndroidタブレットも比較してみましたが、 (Google Playが使える時点でLenovoの圧勝だと思っていた)意外にバンド18に対応しておらず、選択肢には上がりませんでした。
MediaPad M5などもSIMフリーモデルではバンド18対応しているので、4GBモデルも出たことですし、コチラもおすすめです。
HUAWEI MediaPad M5 lite 8 タブレット 8.0インチ LTEモデル RAM4GB/ROM64GB スペースグレー 【日本正規代理店品】
- 発売日: 2019/11/29
- メディア: エレクトロニクス
Playストアが使えないという点について
これはめちゃくちゃきついです。
ゴロ寝タブレットということで主要動画サービスが見られれば良いかなと考えていて、 個人的にはプライムビデオを多用するので、Androidタブレットの利点を活かしダウンロードして ゴロ寝して観る、という生活を夢見ていました。
プライムビデオのアプリなら、Amazonのアプリストアをインストールすればよく、 他のタブレットと遜色なく使えるためです。
ただ、やっぱり今までGoogleのPlayストアで購入してきたツール類が全部使えなくなるのは痛すぎました。 これがロックイン のパワーですね。
意外な落とし穴
そして落とし穴。
前述の通り、プライムビデオ使うからPlayストアは最悪妥協できるだろうと思っていたんですが、 なんとDRM保護の対応レベルの関係でHD動画はダウンロードできないとのこと。。。
国内で販売されているタブレットが同様の理由でHD動画ダウンロードできないらしく、 ストリーミング再生のみHD画質で再生できるらしいのですが、 速度制限時に1Mbpsまで落とされてしまう楽天UN-LIMITでは視聴が困難です。
これは割と致命的で、動画のダウンロード再生すらもままならず、 Googleで購入したコンテンツも使用不可能という板が爆誕してしまいました。
(寝室まで無線LANが届かないので、モバイル回線で代用したいと考えていた)
終わりに
以上、MatePad 10.4 「BAH3-L09」の購入感想でした。 うむむ・・・私のような用途を検討している場合はオススメできないですねぇ
HUAWEI MatePad 10.4インチ LTEモデル RAM3GB/ROM32GB ミッドナイトグレー 【日本正規代理店品】
- 発売日: 2020/06/12
- メディア: エレクトロニクス
おまけ:HUAWEI について
GoogleのPlayストアから締め出されるというAndroidメーカーとして致命的なディスアドバンテージを抱えてしまったHUAWEIですが、 多眼カメラブームにいち早く乗っかり、カメラメーカのライカとも組むなど製品に新たな機能を取り込むのに貪欲な企業というイメージです。
自分もP9を買いましたし、今でも好きな端末です。(なぜ楽天回線を拾わないんだ・・・?!)
今後米中の禍根が解決するかどうかはわかりませんが、 また日の目を見ることがあるといいなと個人的には思いますね。